「マッチ箱の脳」 森川幸人 著

マッチ箱の脳(AI)―使える人工知能のお話
「文科系向けのAI本を意識した」というだけあって、分かりやすいと言えば分かりやすい。けど、あまりにも入門部分に力を入れ過ぎている感じがする。例題が簡単すぎてアルゴリズムの存在意義があまり見えてこない。ほんとにこんなもんなのかなあと、威力みたいなものがいまいちぴんと来ない。まあ、もともとそこまで伝えることはこの本の範疇じゃないのか。俺も知識はないのでこのくらいでちょうど良かったのかもしれないけど。


例えばニューラルネットワークの例題。
値段の違う3種類のおかしを合計金額がある値を超えるか超えないかを判定するシステムをマッチ箱で作るわけだけど、結局合計金額を出してその値が超えてるか超えてないか判断してるだけじゃん、という気がしてしまう。マッチ箱に入れるマッチの本数はお菓子の値段に比例した本数になるなんてやる前から目に見えてるじゃん。それを自動的に見つけるのがすごいんだということなのかもしれないけど……
どうせ途中を省くのなら、自力で計算するのは面倒でムリってくらいの問題が出てきた方が威力を実感できて良かったような気がする。


あるいは強化学習法の例題。
いくつか分岐のある道をゴールに辿り着けるようにするわけだけど、結局行き止まりに向かう道を消去してるだけじゃん、という気がしてしまう。せめてゴールに辿り着くルートが2本ある例題にしてほしかった。


もちろん原理を説明するのが目的だから、そういう意味では分かりやすいのは確かなんだけど、これらの例題では効果をイメージできない。確かに内容は簡単なんだけど、この本だけ読んだら「AIって大したことできないんじゃないの?」と思ってしまう。入門書にそこまで期待するのが酷なのか?